11月20日。
朝からすごく天気が良かった。
前日のお通夜でちさの胸の上に置いてあった花束は
病院が用意してくれたもののままだったので
池袋でちさに小さなブーケを買った。
ちさが永眠する2日前、
桜じゃないけど桜色の花と
ちさの好きなオレンジ色をした花びらの物凄く細いガーベラを買って
病院の花瓶を借りて活けて、
「ちさ、お花見える?
桜色のお花と、ガーベラ買ってきたよ」と言うと
もうだいぶ目も見え辛くなっていたのに
何故かその時ははっきり見えて、
すごく珍しく大きな声で
「うっわーーーー
すごくきれい。すごくきれい。ほんまにきれい。
あんた活けるのうまいやん。ほんまきれいやわ。」
と言った。
そしてガーベラを一本取って
「ちさ、これガーベラなのに花びらがすごく細いんだよ。
珍しいよね。」
と言って手渡すと
しっかり握って、顔に近付けてみたり手で撫でたりしながら
「ほんまや〜。これメチャかわいい。かわいいな〜。」
と言って
すごく久々に、本当に嬉しそうな
かわいいかわいい満面の笑みを見せてくれた。
手に持っているオレンジ色のガーベラが本当に良く似合う、
本当にかわいい笑顔だった。
だから、最後のブーケは色は違うけど
花びらの細いガーベラで作った。
ちなみに、ちさ永眠の前日は黄色いカラーを買って行った。
同じように活けて、
「ちさ、黄色いカラーだよ。」と言ったら頷きながら
一所懸命見ようとはしていたけど、結局、見られなかった。
そしてすぐちさが、
「あこ明日も来れる?」と言うので
「来られるよ。」と言ったら
「ほな今日はもうええわ。」と言った。
病院に到着して5分くらいだったので笑ったけど
「分かったよ、また明日ね」と言って病室を出た。
ちさはブンブン手を振っていた。
そしてその日の夜、ちさはこん睡状態に陥った。
お別れの会の式場に到着すると
ちさは相変わらず重たーいドライアイスを胸に乗せられてるのに
そんな素振りはちっとも見せず
あちこちが痛くてあんなに
「起きる!起こして!せーの!せーの!」と言っては
まっちゃんに支えられて寝返りを打っていたのに
昨日と同じ姿勢で立派に死体を続けていた。
「ちさ、花びらの細いガーベラだよ。」
っていつもみたいに言いながら
ちさの胸の上のお花と持参した花を取り替えた。
またお化粧を直してあげようと思っていたのに
化粧崩れしていなくてがっかりした。
お別れの会が始まり
またアタシはちさのお父さんに振られて
何やら訳の分からない事を喋り
他の方々は立派に
ちさの著書がどれほど評判良かったか、
どれほど続編を心待ちにしている人がいたか
旅が好きだったちさには
世界中から悲しみの声が届いている事などを説明してくれた。
そして、ちさの棺にお花を入れて下さい、と
白いカーネーションが配られた。
結局ちさに最後あげるお花は
白いカーネーションになってしまうなぁと思いながら心の中で
「いや、アタシのセンスじゃないしこれはしょうがなくね?」
とちさに言い訳した。
お花をちさが一番痛がっていた
お腹の辺りに置いた。
病院で医者がちさの脈を聞いたり
目にライトを当てたりした後
「お亡くなりになっていると思います。」
などと曖昧な事を言って
「思いますってナンダヨ?!」
「死ぬってこんなに曖昧なの?!」と思いながら
ちさにお化粧をしていた時
ちさはまだとっても温かかった。
唇が動いたような気が何度もして
ちさの口元で聞き耳を立ててみたり
ちさの胸に耳を当ててみたりしても何も音はしなかったけど
確かに少しずつ体温も下がって
みるみる唇の色も変わったけど
ちさは本当に温かかった。
お通夜の日、霊安室でちさに会って頬を触った時
ドライアイスで冷やされ続けたのもあり
ビックリするほど冷たくて
「つめたっ!大丈夫?」と思ったけど
まぁちさが大人しくしてるから大丈夫なんだろうな〜などと思いながら
お化粧を直した。
だけどお花をお腹の上に置いてちさの冷たいけど柔らかい頬に触ったら
多分初めて「死んでるのかも知れない」と心底感じた。
と言うか、認めざるを得なかった。
棺の蓋を閉めると言われて
気がついたら
棺にぶら下がって
ダラダラ鼻水を流しながら泣いていた。
誰かに助けて欲しくて
蓋を閉めるのをやめて欲しくて振り返ったら
ちさのお母さんが母親の優しい顔で頷きながらアタシを見ていた。
まっちゃんもお父さんもご親戚も
グッと堪えて一所懸命ちゃんと立っていた。
ご親戚がちゃんとしてるのにアタシ何してんの!
と我に返ったけど
棺から離れようと思っても離れられなかった。
棺の蓋を持っている係の人が
ちさを向こうへ連れて行きたがっているように見えて
何だか鬼だか悪魔だかに見えた。
起きるなら今だよ!と思いながら
何度もちさの名前を必死で呼んだけどちさは起きなくて
とうとう棺の蓋が閉められる時
寂しがり屋のちさが心配で心配で
「ちさ、怖くないよ。大丈夫だよ。」と言ったら
頭の中でちさが
「あんた棺桶経験ないやん。」と突っ込んだ。
火葬場までバスには乗らないで
まにゃと一緒に車で来ていたイズミちゃんに送って貰った。
ちさ達より少し早く着いたので
ちさをお出迎えして
まだもう少しちさと一緒にいられるのかなと思ったら
あれよあれよと言う間に鉄の扉の前に運ばれて
気づかない内にちさの棺が顔の所だけ少し開けられていた。
ちさのお母さんが
「お父さん、いやや。ちさちゃん、おねえちゃん。」
とちさに話しかけていた。
だけどアタシはまた何処かで現実逃避をしていて
まさか焼かないだろうと思っていた。
ちさの棺が閉められて
鉄の扉が開いた時
物凄い勢いの炎の音がゴーーーーーーーーーーと聞こえて
ようやく
これはマズイ、マズイマズイ、さすがにこれはダメでしょ。
起きるなら今しかないよちさ。
とまた思って
何度も名前を呼んだけど
やっぱりちさは起きず
そのまま鉄の扉が閉められた。
鉄の扉の前から離れられず泣いていたアタシに
葬儀場から付きっきりでお世話をしてくれているおばちゃんが
「いつまでもここにはいられないのよ、お部屋に行きましょう。」
と言ったけど
葬儀場の人も火葬場の人も全てが敵に思えていたので
シカトした。
ちさを待っている間は
本当に楽しかった。
ビールを飲みながらゲラゲラ笑っていろんなちさの話をした。
係の人が呼びに来ても
何となく楽しい気分のままで鉄の扉の前に行ったら
既に扉は開いていて
鉄の台車の上にちさの骨らしき白い物がバラバラと乗っかっていた。
まさか、ちさかな。と思った。
「変わり果てた姿」
という言葉は、こういう時に使うんだろうとも思った。
骨を拾うとすぐ係の人が
非常にシステマチックに
「こちらがのど仏でございます。
この骨のこちらが頭、こちらが腕、
故人様が合掌をして座禅を組んでいらっしゃるように見える事から
のど仏という名前になったと言われております。」
などと説明しながらチャッチャとちさの骨らしきものを
2つの骨壷に分け入れた。
ちさのお父さんが、
「その粉も全部入れてやって下さいね。
残らんようにお願いしますね。」と係の人に声をかけた。
2つの骨壷を濃紺と紫色の間みたいな色の風呂敷で包んで
まっちゃんがそれを大切そうに持っているのを見たら
急にそれがちさだと思えた。
風呂敷を撫でながら泣き出したアタシの背中をポンポンして
まっちゃんが
「大丈夫、これはちさじゃないから。
これはちさの抜け殻だから。」
と言って
隣でちさのお父さんが
「そうやな。これはちさの抜け殻や。」
と言ったので
なんだ、そうなのかと思ったらまた急に悲しくなくなった。
全てが終わったのだと思ったら
葬儀場からずっとお世話をしてくれていたおばちゃんや
棺の蓋を持っていた人達、
システマチックだった全ての人達が愛おしく思えて
感謝の気持ちでいっぱいになって
葬儀場からつきっきりだったおばちゃんに
「お世話になりました。ありがとうございました。」と言った。
すると突然おばちゃんは涙ぐんで
「本当に、彼女はいいお友達をたくさん持って幸せだったわね。」
と言った。
ちさの事をそう思ってくれて本当に嬉しかった。
その後の親族のお食事会にも誘って頂いていたので
もうここまで来たら最後まで図々しくいるぞー!と開き直り
お邪魔させて頂いて本当に楽しくお食事をした。
ちさが最後の頃はコーラばっかり飲んでいた事、
お父さんがコーラを100mlまでしか飲ませてくれないからと、
お父さんがいない隙に弟に命令して隠れてまでコーラを飲んでいた事、
最後にちさが口にしたのはアタシの作ったリンゴゼリーで
実はそれを食べたから死んだんじゃないかと
まっちゃんが密かに疑っている事、
ちさが最後に発注した仕事の事、
ハトコのアヤちゃんを妹のように可愛がっていた事、
なかなか素直になれなかった人に、
ちさがちゃんと最後「大好き」と言えていた事、
ちさに「ありがとう」と言われた友達に
何も言われなかったまっちゃんがヤキモチを妬いている事、
だけど、病気が見つかってから結婚を避けて来たちさが
「まっちゃん嫁に貰って!」と朦朧としながらも言った事。
本当に楽しくお酒を飲んで、皆でちさの話をした。
それからお別れの時間になって
毎日のようにお顔を見ていたちさのご両親とも
もうしばらくお会いする事はないんだな。と思った。
「本当に、ご親せきの皆様の前で出しゃばって
棺に張り付いてすみませんでした。」
と謝ったけど
誰一人責めなかった。
すごく温かい優しい顔で、アタシを見てくれていた。
その後、ちさのハトコのアヤちゃんと
ちさが最後に仕事を発注したカメラマンのジャニ君と
初対面だらけの3人で
飲んで飲んで結局うちに辿り着いて
今日までダラダラと過ごす事になるんだけど・・・
疲れたので、それはまた今度。
とりあえず小股千佐、平林豊子の最後のイベントの事を。
忘れないうちに書いときます。
posted by acology at 00:16| 東京

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